弁護士の仕事は、相談者や依頼者の方々に「地図を示し、鏡を見せる」から始まります。
事務所にいらっしゃる方々は、みなさんそれぞれ、なにがしかの困難を抱え、そのご事情やお気持ちを話されます。その内容には、ご親戚やご友人にも話したことがないことが含まれていることも少なくありません。初めて会ったにもかかわらず、そこまでされるのは、弁護士に、「共感」や「よりそう」ということを超えた「何か」を求めていらっしゃるからでしょう。
私は、弁護士が話を聴くのは、「法律上取り得る手段」を想定しながら「次の手」を考え、お手伝いするためであると考えております。
そこで「地図を示し、鏡を見せる」です。
人は誰しも、様々な出来事を、多かれ少なかれ「自らの物語」の中で受け止めているのではないでしょうか。それが困難な場面となると、「自分の思い」が先行した内容の物語になってしまいがちです。他者からみると「どうしてそちらの方向に?」というような説明となっていることも少なくありません。何より、そもそも苦しい状況の中では、十分に整理して話すこと自体が難しい。「とにかく苦しい。説明なんてできない。」という方もいらっしゃいます。
そこで、「第三者からみた事実やその評価」が有効となります。弁護士が「地図を示し、鏡を見せる」です。
例えば「目的地へ行く道は北だけでしょうか? 西の道を選んで回り道をしてみては?」「今のご様子をみると、北への道へ進むことは体力的に難しい。仮に西を選んだとしても、こことここでの休憩は必要では?」というような。
それはもちろん当事者ご本人の全てを知ってのことではありません。しかしまずそれを示すことで、「いや、そうではなくて、実は・・」と、ご自身が「説明の隙間を埋める」ということをしやすくなります。
私は、「地図を示し、鏡を見せる」ことで、「誰からも分かるような言葉にする」ことを始めることができ、そしてその「言葉にできたこと」から、ご自身が、「いや、少し違う」と、足し算引き算していくことができるようになるのではないか?と考えております。
「地図を示し、鏡を示すことによって、ご自身が言葉を得る。言葉を得て考える勇気が湧く」のでは?と思うのです。
弁護士は、「どうしたらよいでしょう?」という質問をよく受けます。
ただ、現実にハンドルを握りアクセルを踏んでいるのはご自身です。私たちは、「地図を示し、鏡を示して」ご自身が十分な力で、しっかり考えて決断されるお手伝いをし、法的手段を用いてこれを実現する。それが仕事であると考えております。


コメントを残す